加賀利友弘のサイズブログ
2014年6月
2014/06/03

隕石が地球に落下してくる映画の台詞にもありましたが、2万キロメートルという距離は、地球上では途方もない距離に感じますが、天文学の分野では「耳元をかすめる」ほどの至近距離なります。
2013年2月15日にも、ロシア南部に隕石が落下し、1,200人の負傷者を出した出来事は有名です。


すばる望遠鏡

その翌日、16日の午前4時25分頃にも「2012DA14」という小惑星が、静止衛星よりも地球に近い距離を通過しました。その距離が、2万7700キロメートルでした。
直径が45メートルもあったこの小惑星が、もし地球に落下していたら、東京都の半分の面積が消滅していたところでした。



よく会話で、途方もない数値などを、「天文学的」と比喩したり揶揄したりするものです。
日常世界からは程遠い、あまりにも広大すぎて虚無にすら等しく感じてしまう、そんな天文学の最前線で活躍しているものは、アマチュア天文家の人たちや、地球上のいろんな場所に設置された天文台です。そんな天文台の一つに、三菱電機が設計・建設した、ハワイのマウナ・ケア山の山頂にある『すばる望遠鏡』です。

この天文台からは、新しい発見が日々、発表されています。
例えば、さそり座方向、470万光年ほど離れた場所に、太陽と同じ質量を持つ若い恒星が発見されたり、太陽系外惑星で最軽量といわれる『第二の木星』が、すばる望遠鏡を通して発見されました。
その他には、フィラメント状星雲の発見、赤外線による超新星爆発の観測、太陽系外の微惑星リング、かに座方向にある127億光年先のクエーサーなどが、単独観測によって発見されました。



1991年に、『日本国設大型望遠鏡』のプロフェクト名で天文台の建設が開始されましたが、名称を公募して「すばる」という名前が制式に決まりました。
建設総額は400億円、主鏡が直径8.2メートルという、当時は世界最大の反射望遠鏡でした。この主鏡は、アメリカのコントラベス社とコーニング社が7年以上も費やして完成したものです。
しかし、天文台のドームの建設中に火災が発生し、四名の作業員が死亡するという事故も起きました。
ドームは、一般的な半球形ではなく、円筒形になっています。これは、天文台からの放熱によって、乱流による空気の乱れを防ぎ、星像を悪化させないための工夫です。


北緯19度49分43秒、西経155度28分50秒、海抜4,139メートルの場所に建設されたリッチークレチアン光学式の『すばる望遠鏡』は、最新の技術を持って改修が行われ、日々、進化の一途を辿っています。
2013年7月31日も、1999年の観測を開始した日から、初めて巨大カメラを交換しました。それにより大幅に性能が向上し、今までは継ぎ接ぎで作成していたアンドロメダ銀河の写真を、ほぼ一枚で撮影できるようになりました。

観測技術に関しては、主鏡の精度を保つために、動的支持装置が搭載されています。直径は8.2メートルですが、厚さが20センチメートルしかなく、鏡面精度を100nmに保つためには必要不可欠になります。
望遠鏡を動かした際に生じる主鏡の歪みを、コンピュータによって制御された261本のアクチュエータを使って主鏡の裏側から支持し、0.1秒に一回のサイクルで姿勢制御を行なっています。


また、地球上で天体観測を行なった場合、大気の乱れによって星像が揺れてしまいます。その為、地球大気圏内の大気の乱れを自動補正する装置が、2000年12月にカセグレン焦点に設置されました。更に、人工星を用いた高精度な補償光学系の装置を開発、赤外ナスミス焦点に設置され、2006年10月の初観測に成功しました。



観測装置に至っては、複数設置されています。
高分散分光器、近赤外線分光撮像装置、広視野主焦点カメラ、冷却中間赤外線分光撮像装置、微光天体分光撮像装置、コロナグラフ撮像装置、多天体近赤外分光撮像装置の七つであり、それぞれの装置で可視光線から赤外線までの周波数が観測可能になっています。
今後も、コロナグラフフィルターの精度向上やレーザーガイド星装置、主焦点カメラの撮像する範囲を広げるモザイク型CCDカメラなどが投入される予定です。



●すばる望遠鏡 公式HP:http://www.naoj.org/j_index.html